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2024年11月27日
都民向け公開講座(11/4) レポート
第14回都民向け公開講座 2024年11月4日開催
口腔がん経験者と現状の医療の役割を考えよう
口腔がん経験者と現状の医療の役割を考えよう
11月とは思えない程の暖かな日差しに包まれ、日本歯科大学131講堂には、東京都からの後援を得、都民の方を含め70名を超える皆様にお集まり頂き、口腔がんについて現状と最新の情報をお届けいたしました。
日本歯科府大学附属病院歯科放射線科・口腔病理診断科教授 柳下寿郎先生より口腔がんについて分かりやすく、、病態や、症状、早期発見の必要性、そのための歯科健診の重要性等詳しくわかりやすいご説明を頂き、その後実際に口腔がんを経験された方を交えデスカッションが行われました。皆さまからは「口腔がんについて知ることができてよかった」また、歯科衛生士職からの感想では実際の患者様からの声に「口腔がんの現状がわかり、日々の診療や検診に何を求めるかまた、経験者の方の貴重なご意見を聞けて明日からの診療の糧にしていきたいと思いました。」等の感想を頂き実りある研修会となりました。
研修会の内容について(回答 38名)
当日のアンケートよりご質問を頂きました2件について先生よりご回答頂きましたので、皆さまと共有させて頂きます。柳下先生、大変ありがとうございました。
日本歯科府大学附属病院歯科放射線科・口腔病理診断科
教授 柳下寿郎先生
【質問1】
40代の方に舌癌が見つかり、切除しました。定期的なクリーニングにきてくださいますが、こちら側ができる患者様への対応や声かけ、あとはクリーニングなど気をつける事はありますか(ご回答)
ご質問、有難うございます。
若い患者さんで、大変なご苦労と不安があるかと思われます。しかし、若い分、口腔機能および気力という意味ではポテンシャルはあるはずです。そのポテンシャルを出せるように我々が支援できたら、非常にうれしく思います。
まず、第2癌、第3癌が口腔粘膜から発生することがあります。それを早く見つけてあげてください。そのために、視診、触診(白斑等をガーゼで擦るなども含む)、口腔内写真の撮影をうまく利用してください。そして、必要であれば、細胞診検査をやることも1つの方法かもしれません。これらは、口腔メインテナンスをするときに実施しましょう。毎回でなくてもいいです。年に1回でも構いません。そして、一般歯科医院でできる範囲内の内容でかまいません。病変の判定・診断に苦慮するときには手術をした先生のとこで、follow upしているでしょうから、そこで聞いてもらいましょう。そのように声掛けをすることも重要です。患者さんは主治医になかなか質問できません。ですから、「質問していいですよ」と声をかけてあげてください。クリーニングについては、やはり本来の舌の機能を失っている可能性があるため、汚れが溜まりやすい部分があります。その部分をしっかり説明し、患者ご自身で清掃できるように支援してあげてください。あとは、口腔粘膜の汚れをスポンジやガーゼを指に巻いて拭ってあげてください。そして、上手く磨けていたら、必ず褒めてあげてください。
最後に、コミュニケーションですが、明るい話をしてあげてください。例えば、家族と食事に行って、美味しいものが「少し」食べられたと聞けば、次は、もっと美味しいものが食べられるように、舌の運動の訓練をしようとか、カラオケ行っても私一人が歌わなかったというのであれば、1曲でも歌えるようになろう。そのために、歌の練習をしよう!30分の散歩に行っても涎が出なくなったというのであれば、それを一緒に喜んであげてください。患者さんをいかに明るくするか、患者さんに生きていることがどんなに楽しいか、それを教えてあげてください。仮に、これらが上手くいっていない場合には、言語聴覚士がいる病院を紹介しましょう。そこで、口腔機能のリハビリをしてもらいましょう。徐々に、良くなるはずです。
【質問2】
癌の早期発見には、白板症、扁平苔癬は、全て生検をした方が良いのですか?経過観察だけでも問題はないのでしょうか?
一般歯科から大学の歯科室や専門的歯科病院に紹介するタイミングや患者様との説明も難しい気がします。
どうぞよろしくお願い致します。
(ご回答)
ご質問、有難うございます。
現在、口腔腫瘍学会 表在癌ワーキンググループでは、専門医に口腔潜在的悪性疾患について、しっかりと鑑別診断・生検を実施し、確定診断をするよう説明しています。生検の結果、直ちに悪性を疑わない場合には症例にもよりますが、専門機関でfollow upをするか、紹介元で経過を観察していくかを専門医が判定するはずです。では、一般歯科医院でのfollow upですが、生検で、「扁平苔癬」、「過角化症」と診断されていても、将来、癌化する症例があります。ですから、安心をせず、粘膜病変の変化(白斑が厚みを増す、白斑内に赤みが増す、病変内に口内炎が出来て治らない等の変化)がみられたら、再度口腔外科で見てもらいましょう。これを怠ると、癌の見逃しと判定され、責任を問われることがあります。これは、最初に専門医に紹介したときは悪性ではなかったが、時間が経過して癌化した可能性があります。その場合は別の病変と考えた方がいいです。すぐに、専門医に紹介しましょう!
患者さんへの説明では、口腔がんは患者さんご自身が目で見つけることができる数少ない病気であることを説明しましょう。そして、舌縁が好発部位であること、歯肉炎と歯肉癌が鑑別しにくいことなどを繰り返し説明しましょう。簡単でいいです、前述の粘膜の変化について説明をしましょう。最後に、口腔メインテナンスを定期的に受診してもらい、年1回はそのうちの1回の口腔メインテナンスを口腔がん検診に替えてもらい、粘膜のチェックを受けてもらいましょう。